COLUMNコラム
2025年10月4日の変化
2025.10.10
1.始めに
長いことガラスの天井であった日本において、女性の自民党総裁が誕生した。
同人が保守派であることへの警戒が一部にはあろうが、女性の活躍、保守本流の巻き返し、ステマ問題、低金利政策の維持、経済安全保障への投資、ワークライフバランスの再考等、さまざまなテーマをうむ方であろう。
2.誕生の背景と思われるポイント
第一に、社会全般として女性の活躍を期待するのであれば、政治のトップにもまた女性を望むのは当然のことであり、ドイツ、韓国、イタリア、イギリス等でも女性のトップがいたことは記憶に新しい。
第二に、近時は新しい保守勢力の台頭もあり、伝統的な保守層にも焦りが生じていたものと思われる(※1) 。
第三に、今回の対抗馬がステマ問題に苦しめられたのも、非常に現代的な課題である(※2) 。
3.今後生じる問題点
(1)金利・円安・不動産価格はどうなるのか
他方で、日本は長年金利なき社会が社会問題化してきたにも関わらず、その傾向が延長された場合には、円安が更に進行することが想定される(※3) 。
(下記図表は長期金利推移グラフ | 家づくりコンサルティングから。)
上記の表からも明らかなとおり、1992年には6%であった政策金利は、2025年にようやく0.5%に上昇している状態である。他方で、円安は、2011年頃の1ドル79円を天井に、2024年は151円まで進行している。
(下記図表はUSドル/円の為替レートの推移(1980~2025年) – 世界経済のネタ帳から)
このような円安状況は物価高にも影響を与えるばかりか(※4) 、不動産市況にも影響を与え、2024年の首都圏マンション価格の中央値は6,398万円、東京23区では、中央値は8,940万円だとされる(※5) 。
他方で、住宅ローンの「当初借入額の中央値は首都圏で約3,474万円」とされている(実際には頭金があるので4,000~5,000万円程度が購入可能金額となるかもしれない)(※6) 。
(2)労働時間はどうなるのか?
また、近時日本は労働時間の削減が進んだが(下記参考資料によれば、男性は週41時間程度であり、OECDによると31位とのことである)、さらなる多様化が図れるかは非常に関心を呼ぶところである。
なお就任演説で新総裁は「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます。」と述べていると共に(※7) 、批判が集まっている(※8) 。
(下記図表は「わが国の過去 50 年間(1973 年~2023 年)の労働時間の推移についての考察(厚生労働省 労働経済分析レポート No.4)」から)001203082.pdf
下記図表は(世界の労働時間ランキング 気になる日本は何位? | ELEMINIST(エレミニスト)から。
4.最後に
以上見てきたように、仮に低金利・円安によって格差が広がる結果となるようでは、国民の不安が拡大する可能性がある。
かかる不安を解消するためには、従前から議論がなされている構造改革による自然利子率の引上(※9) 、すなわち労働市場改革(※10) ・生産性の向上・規制緩和と競争促進(※11) 或いはその他の政策によって経済復興が成し遂げられるかどうか、注目が集まるのではないだろうか。
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■1 東急沿線、参政党の得票目立つ JR中央線は国民民主や女性が躍進 – 日本経済新聞
■2 <主張>小泉陣営のステマ 民主主義を歪める行為だ 社説 – 産経ニュース
■3 自民新総裁で円安・株高の見方、「高市トレード」再始動か | ロイター
■4 高市早苗氏に「アベノミクスの呪縛」 積極財政は物価高助長のリスク – 日本経済新聞
■5 首都圏マンション価格、中央値は4.9%上昇 | 業界関連ニュース | 東京都宅建協会 全宅保証協会東京本部
■6 三井住友信託銀行「全国エリア別に紐解く住宅ローンの利用実態miraiken_report_2504_2.pdf
■7 【全文公開】高市早苗氏の勝利演説「働いて働いて働いて働いて働いて参ります」自民党で初の女性総裁 | TBS NEWS DIG (2ページ)
■8 高市新総裁の「ワークライフバランス捨てる」決意発言を一部メディアが批判「法律を軽視」 – 産経ニュース
■9 自然利子率については例えば、日銀の自然利子率を巡る議論 | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI)参照。
■10 労働市場改革については例えば、賃上げの定着と「三位一体の労働市場改革」の継続を(スペシャルトピック:ビジネス・レーバー・トレンド 2024年8・9月号)|労働政策研究・研修機構(JILPT)参照。
■11 ソフト面への投資を期待する見解としては経済大転換の逆説 高市早苗・自民党新総裁は流れに弾みを – 日本経済新聞参照。