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【BAPクローズアップ案件】ダイセキ、子会社ダイセキ環境ソリューションをTOBで完全子会社化へ

2025.10.27

グループ最適化を狙う親子上場解消

公正性確保と少数株主保護を両立した設計で、完全子会社化を進めるTOB

今回のM&Aサマリ

産業廃棄物リサイクル大手の株式会社ダイセキ(以下、ダイセキ)は、連結子会社である株式会社ダイセキ環境ソリューション(以下、DES、証券コード1712)を完全子会社化する目的でTOB(株式公開買付け)を実施する。買付価格は1株1,850円、公表前営業日の終値1,157円に対して+59.9%のプレミアムである。買付期間は2025年10月3日〜11月17日(30営業日)、決済開始日は11月21日の予定である。買付予定数の上限は設けず、下限は約207万株(自己株式控除後の基準株式の12.3%)。下限未達の場合は不成立とし、成立後は上場廃止を前提とする。DES取締役会は賛同および応募推奨を決議している。応募しない株主にも、後続手続によりTOBと同額の金銭対価が行き渡る設計である。

ダイセキTOB|親子上場解消|株式会社ダイセキ環境ソリューションを完全子会社化

親子上場の解消でグループ最適を図る

本件の買付者は親会社であるダイセキであり、対象会社は連結子会社のDESである。DESは土壌汚染調査・対策や建設系汚泥・埋設廃棄物処理、廃石膏ボードのリサイクルなどを担い、ダイセキ本体の産業廃棄物中間処理・リサイクル機能と補完関係にある。ダイセキはすでにDES株式の約906万株(自己株式控除後の基準株式の53.9%)を保有しており、今回、自己株式と親会社保有分を除く全株式の取得を目指してTOBを実施する。狙いは、親子上場に伴う利害相反・機動性の制約を取り払って、意思決定を迅速化し、経営資源を一体的に活用できる体制を整えることである。対象会社取締役会は10月2日に賛同と応募推奨を決議している。支配株主である親会社による取引である以上、手続の公正性と意思決定の独立性が核心論点となるが、本件では後述の特別委員会関与や価格決定プロセスの開示など、少数株主保護に配慮した枠組みが整えられている。

条件の骨子と公正性高水準プレミアムと30営業日設定

本TOBの買付価格は1株1,850円である。これは公表前営業日(2025年10月1日)の終値1,157円に対して+59.9%、過去3か月平均1,197円に対して+54.6%のプレミアムであり、少数株主の経済的利益に配慮した水準と位置づけられる。買付期間は2025年10月3日から11月17日までの30営業日を確保し、決済開始は11月21日予定である。

公正性の確保については、ダイセキおよびDESの開示に、第三者算定機関による株式価値算定の取得、対象会社側の特別委員会設置、そして当該委員会の助言を踏まえた取締役会の賛同・応募推奨決議といった措置が明記されている。とりわけ価格の決定過程では、当初提示から協議・交渉を経て最終的に1,850円で合意した経緯が詳細に記され、プレミアム水準の妥当性についても特別委員会が評価している。支配株主取引で求められる「プロセスの公正」を、具体的措置と文書開示で支える構造である。

スキーム設計

本TOB成立のための下限は約207万株(自己株式控除後の基準株式の12.3%)とされる。応募総数が下限に満たなければ不成立であるが、下限以上であれば応募株は全量買い付ける。下限は、(a)基準株式数に係る議決権の3分の2、から(b)ダイセキの既保有議決権数、および(c)DESの代表取締役社長・副社長に付与された譲渡制限付株式(合計8.3万株)に係る議決権を控除して逆算された定量根拠に基づく。譲渡制限付株式は応募できない一方、本件の株式併合を承認する株主総会で当該役員が賛成する見込みであるため、下限算定において当該議決権を控除したとされている。このように、株式併合の特別決議成立を見据えて実行確度を高める「閾値設計の可視化」がなされている点は、本件の工夫である。

TOB成立後は、取得比率が90%以上に達した場合は会社法に基づく株式等売渡請求で一括取得し、90%未満でも株式併合を用いて端数処理により現金交付を行う。いずれの手段でも対価はTOBと同額であり、応募の有無で経済的不利益が生じないことが明示される。なお、ダイセキはMoM(Majority of Minority)を設定していないが、これに代替する形で特別委員会関与や第三者算定の取得など、少数株主保護のための措置を講じていると説明している。上場廃止の見込みも、結果に応じて所定の手続を経て進むとされる。これらは、支配株主取引の公正性と実行確度を同時に担保するための設計だといえる。また、ダイセキは本TOBの決済資金を自己資金で賄う計画を明示しており、資金手当の不確実性が抑制されている。これらの要素は、少数株主の経済的公平と取引の完遂可能性を両立させるうえで重要である。

出典・参考資料

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